あの夏の君へ
私たちは付き合って一ヶ月、初めてのキスをした。
そして今日初めて手を握った。
「亜樹〜本間に離れんといてな」
「離れへんよ…」
始まりには終わりがあるように。
生きるには死が絶対条件なように。
出会いには別れがあるように。
私たちにもいつか亀裂が入る日がくるんやろうか。
いつか必ず、お別れしやんとあかん日が訪れるんやろうか。
荻が私を強く抱き締めた。
その体を強く抱き締め返した。
ずっとこのままが良い。
ずっとずっとこのままが良い。
歳なんて取らないで、老けもせず。
「ね、荻」
「ん?」
「いつかさ、別れって来るんかなぁ。将来は私たちの事なんて何にも知らん人と結婚したりしてるんかなぁ…」