あの夏の君へ
お昼休みが終わって、荻が教室に帰ってきた。
いつもと変わらない素振りだった。
いつも通り。
それがなぜか腹が立った。
「荻!!」
「うわ。何?どしたん??」
「ちょっと話あんねんけど!」
「あー。何??」
いつも通りの彼だけど。
いつもと違った。
上の空。
あの時あんたは何を考えてたん?
「荻…」
「ん?」
呼んでみたものの、これと言って話す内容はなかった。
何を自分は伝えたかったのかも分からなくなった。
「何やねん」
「…忘れたわ…」
「は?」
「ごめん」
伝えたいことが分からなくなって、自分の席に戻った。