あの夏の君へ
君が黙って。
私が泣いて。
ケンの鳴き声が電話越しから聞こえて。
冷たい外の空気が私と荻の唯一残っている繋がりな気がした。
“キツいこと言うようやけど、俺らは甲子園狙ってる身やしな”
長谷部くんの言葉が頭に過る。
もうあかん。
もうあかんねんな。
「荻……」
『うん』
「嫌や……別れたくない…」
『うん』
「好きやし…好きやし…」
私の気持ちは伝わってる?
私の涙は君の心に響いてる?
私は君の夢にまだ存在してる?
君は私をどう思ってたん?