あの夏の君へ





「おいっ、亜樹氏!!」

式が終わって、トボトボと教室に帰っているときだった。

亜樹氏と呼ぶのは長谷部くんくらいしかいなかった。

「ちょい、亜樹氏借りてい?」

隣にいた明美に申し訳なさそうに手を合わせると、長谷部くんは私の腕を引っ張った。

「亜樹氏、荻と別れたん?」

「…うん」

「亜樹氏はそれで良いん?」

彼のその言葉が私を苛立たせる。

「良いも何も…私、荻の重荷やったやん。荻がスランプになった原因やん!!」

荻を苦しめた張本人やん。

「一緒にいたいけど…まだ好きやけど…荻は私をほったらかしにし続けて悲しませるんも嫌やからって言うてん。私に何が出来るん??」

私はもう何も言えへん。


いっぱいいっぱい傷つけたんやから。






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