あの夏の君へ
「陽向は確かに最近…調子良いよ。前よりよく走るし、粘り強くボール追いかけるし、一人残って自主練するし。前とは違う。変わったよ、あいつは。頑張ってる」
長谷部くんは私に持っていたタオルを渡してきた。
「けど前より笑わんくなった」
ズキンと突き刺さるその言葉。
痛い痛いと胸がざわめく。
「荻が笑わへんくなったの、私のせいやって言いたいん?」
じゃあ最初から告白するなって?
最初から気持ちを押し殺して、ずっと友達のままでいたら良かったってこと?
「違うやん。あいつはひたすら先発にいれるために一生懸命やってて、亜樹氏を甲子園連れてくってことばっか考えてて、そのためなら笑顔とか、自分の体のこととか、友達付き合いとか捨てるくらい命かけてしとんねん」
長谷部くんは「もうはっきり言うわ」と続きを話し始めた。