あの夏の君へ





「あいつ…一年の時から亜樹氏のこと好きやって言うてたって亜樹氏、知ってる?」

「うん」

「本間に好きや好きや言うとってん。仲良くなりたいなぁって。お前らが仲良くなって、一緒におるようになってからも、好きや好きや言うとった」

「…うん」

真実がひとつ、ふたつと増えていく。

その度に後悔がひとつ、ふたつと増えていく。

「けどあいつ、ヘタレやしな。俺にしか好きや言うてきよらんかった。恥ずかしいからとか、気持ちぶつけたら亜樹が離れてきそうやし、それやったらこのままおるって言い続けよって、お前ら微妙な関係続けてたやろ。陽向はな、女子から告白されても、好きな子おるしぃ言うて断り続けててんぞ?」

涙が止まらない。

ごめんなさいと謝り続けた。

「……」

「付き合いだしてからも、怖いわ怖いわ言うとった。幸せすぎて怖いわって。フラフラしてる亜樹氏見てたら野球なんて集中出来ひんみたいやったで。上の空やっし。恋してる女かって先輩らからもいじられたわ。けどやっぱりギクシャクし出して、メールも返してくれんし、電話も出えへんし、会いたくても、会えんって言われるしで、かなりあいつは悩んでた」

「うん…」

「もうそんな辛くなるんなら別れたら良いやんけって言うた。あいつにも、亜樹氏にも」





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