あの夏の君へ
「なあ?亜樹氏?」
「へ?何?」
長谷部くんは毎度クラスに現れては荻と喋っていた。
会話をしない荻と私が嫌やったんか、よく話を振ってきた。
嬉しいけど、切なかった。
荻は気まずいのか、一切こっちを見ようとはしなかった。
苦しくて、悲しくて、自分を拒絶されているような気分だった。
最初は適当に返してたけど、私も荻の態度を見ていたら辛くなって、ほとんど無視するようになった。
時が経てば長谷部くんも来なくなって、到頭、荻とは何の繋がりもなくなってしまった。
もう何もなくなってしまった。