あの夏の君へ
ガラリと開いた後ろのドア。
涙を流しながら振り返った。
「何してるん…」
心配そうに話しかけてきたのは……荻だった。
ビックリして、恥ずかしくなって、急いで涙を拭いた。
練習着が汚れてるんが、この距離からでも分かった。
頑張ってるんや…。
「別にー」
素っ気ない返事で返した。
さっき泣いたから、ちょっと鼻声ぎみだった。
荻は気づいてる?
「お前……風邪か?」
何か探しながら、私に喋り掛けてくる荻。
気まずいなら話しかけてこやんといて。
そう思う反面、心配してくれた彼の気持ちが痛いほど嬉しかった。
「…違うし……」
マフラーに顔を埋める。
このマフラーはあんたからもらったマフラーやで。
使ってるん…気づいてる?
気づいてや……。
何か言ってやぁ…。