あの夏の君へ
駅に着いた私をわざわざ荻はちゃんと家まで送ってくれた。
今日で二往復したな。
「荻」
「ん?」
「唐揚げ渡すん忘れてた…」
「おい!!」
「あはっ」
「しなしなになっとるやんけ」
「ごめーん」
文句言いながらも、唐揚げを食べてくれる。
「なぁなぁ。私にもちょうだい」
「ほら」
口に唐揚げが入れられる。
やっぱりしなしな。
もっと早くにあげれば良かったな…。
「美味いよ?」
「ん?」
「美味い美味い。ありがと」
「…あ、うん。誕生日おめでとう」
月が私たちを静かに照らしていた。