あの夏の君へ




新井田が教室から出て行ったのを確認した後、私は荻の元へ駆け寄った。

そっぽを向きながらフルーツオレを飲んでいた。

「ちょうだいよ」

「無くなった」

空になるような音が聞こえてきた。

口からストローが離れた時、荻の癖を発見した。

荻はストローの先を噛んでいた。

「何でストロー噛んでるん…」

「ええやろ。お前に関係ないやろ」

「……」

荻、私聞いたことあってん。

ストローを噛む人は欲求不満らしい。

でも何に対して欲求不満なのかよく分からない。

もうひとつ聞いたことがあるんよ。

ストローを噛む人は、寂しがりやんやって。





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