あの夏の君へ
「亜樹ちゃん亜樹ちゃん」
「何〜?」
グラウンドを見つめたまま、返事を返す。
興味がない。
たらしの言うことなんて。
「亜樹ちゃん」
信じられない。
いつか簡単に裏切るに決まってる。
「亜樹」
いつか簡単に。
「好きやねん」
頭の中でこだまする。
彼の真剣な目が嘘を付いているようにも見えた。
「目が嘘付いてる」
「俺の?」
「あんた以外おらんやん」
「うそぉ」
「私のどこが好きなん?」
「全部!!」
「嘘つけ」
「本間本間」
新井田は机をバンバン叩き出した。