あの夏の君へ
「強いて言えば…横顔?掴めそうで掴めなさそうな所?」
「意味分からんし」
頬杖を付く新井田がヒヒッと笑った。
呆れて、ため息をついた。
「一ヶ月だけで良いし」
そういう所が信用出来ひんねん。
「どうしよっかなぁ…」
だけどその時、心にある何かを無性に埋めたかった。
隠したかった。
「なあ…」
「ん?」
「キスしても良い?」
そう言いながら段々と近づいてくる新井田の顔。
私の瞼がゆっくりと閉じ始めようとしていた。
その時だった。
「荻――――――!!!!!!」
グラウンドから彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。