あの夏の君へ





「強いて言えば…横顔?掴めそうで掴めなさそうな所?」

「意味分からんし」

頬杖を付く新井田がヒヒッと笑った。

呆れて、ため息をついた。

「一ヶ月だけで良いし」

そういう所が信用出来ひんねん。

「どうしよっかなぁ…」

だけどその時、心にある何かを無性に埋めたかった。

隠したかった。

「なあ…」

「ん?」

「キスしても良い?」

そう言いながら段々と近づいてくる新井田の顔。

私の瞼がゆっくりと閉じ始めようとしていた。



その時だった。



「荻――――――!!!!!!」




グラウンドから彼の名前を呼ぶ声が聞こえた。





< 69 / 278 >

この作品をシェア

pagetop