あの夏の君へ
荻?
「……荻……?」
我に返った私は数センチ先にいる彼の顔に驚き、反射的に彼の体を押した。
「…ごめん…」
そう言い残して、鞄を持って教室から逃げるように立ち去った。
今聞こえてきた声に荻の名前がなかったら……私は気にも止めずに、キスしてた。
荻。
どうしたん?
荻の事が気になって、グラウンドに向かった。
その途中だった。
階段から二人の野球部の人に肩を持たれながら、苦しそうに階段から上がってくる荻がいた。
「荻…ぃ…」
体から血の気が引いた。