あの夏の君へ
そう言った途端、すのこがガタッと揺れ動いた。
「…マジで?」
新井田の驚いた声が響いた。
「じゃあ。頭痛いし、帰る」
それだけを伝えた私は俯きながら歩き始めた。
前を見ることが出来ひんかった。
空の明るさが眩しすぎて。
夕焼けの光が清々しくて。
鳥の鳴き声も、風の音すらも心地よく感じてしまう…。
全てが嫌に感じた。
「亜樹ちゃん、顔真っ赤やで?」
「うるさいねん…」
「亜樹ちゃん、また明日」
新井田の声を無視して、振り向かずに歩いた。
顔を上げたら負け。
照れたら負け。
認めたら負け。
どうしても、自分の想いを認めたくなかった。
彼のことを好きだと認めたら、彼とはもう友達をやっていけへんくなる…。