あの夏の君へ
気づいた気持ち
翌日から荻は松葉杖で学校へやって来た。
心配する人もいれば、興味本位で松葉杖を荻から借りて使い始める子もいた。
ガキだなあ、と染々思った。
彼らは荻の気持ちを知っているんやろうか。
辛い気持ちを分かってるんかな。
「荻」
「あ?」
「おはよ」
「え…あっ、おはよ」
荻の目が腫れてる気がした。
泣いたん?
挨拶が終わるとすぐさまそっぽを向いた荻を見て、予想は的中したんやと感じた。
「…荻……」
「ん?」
「力になるから…な?」
「は?」
「頼ってな?」
荻の眉が下に下がってくる。
昨日の私と同じ。
苦しいん?
何かを伝えて。
苦しそうに口が笑った。
「…ありがと」
グシャグシャと髪を掻き回された。