あの夏の君へ
荻とは家が近い所にある訳じゃない。
荻の家は学校の近所で、駅から近い所にあるけど、私の家はその駅から電車に乗って、二個駅が離れた所に住んでいる。
私が荻の家と仲良いことは母親も知っている。
高校に入って知り合ったのに…こんなにも仲良くなれるなんて、思ってもなかった。
「あら。亜樹ちゃんやん」
「こんばんは!!」
「ほらほら座って座って」
荻の家族はみんな優しい。
嫌な顔ひとつしない。
荻や荻ママや広太が毎回笑顔で迎い入れてくれる。
荻のお父さんと言うと…会ったことがないし、見たこともない。
気になるけど、聞いたことは一度も無かった。