あの夏の君へ





怖かった。

“特別”が。

特別になるかもしれん自分が。

これからの関係が。

怖かったから、一歩も前に進めなかった。

立ち止まったら、このままの関係が続くんかなって思っててん。

それで思った通り、関係はそのままになった。

それが私にとっての幸せやと、心から思えた。

そこまで笑わず、そこまで泣かず…。

最大限の幸せやと思わん?

「恐いねん…。いつか別れが来るんやと思ったら…あいつとは一生一緒に笑ってたいねん…」

臆病だと言ってくれて良い。



初めて誰かを想って泣いた。

今までやってそれなりの人と付き合ってきた。

キスもした。

抱き締めることも。





< 90 / 278 >

この作品をシェア

pagetop