あの夏の君へ





その日は雨が降っていた。

家を出た時はまだ小雨だったのに、学校に着いた途端に大粒の雨へと変わった。

今日はラッキーだと、一人で舞い上がっていた。



荻は毎日部活に行けない分、朝練をしない分、練習開始と同じ時間に学校に来ては勉強をしていた。

放課後も教室に一人残って、熱心に勉強をしていた。

頑張っているその姿が好きや…。




黙々と荻は勉強している。

少し離れた所にある教卓で、私は心を決めて彼に伝える。

唾を飲み込んだ。



「荻」

「…ん?」

「……好きやで…」

彼は開いた口が塞がらない状態だった。

私を唖然と見上げていた。





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