あの夏の君へ
「嘘やろ…?」
荻は持っていたシャーペンを床に落とした。
数分後、一気に顔が赤くなった。
前まではその顔を見るんが嫌やった。
照れた顔も、全部が…。
だけど今はそれも、全てが好きやと思える。
「好きやねん、荻…。付き合ってください…」
荻の気持ちは分かってる。
好きって分かってるから、告白したんやない。
私が好きって気持ちに気付いたから。
「嘘やろ…」
「本間やで」
彼は立ち上がり、床に落ちたシャーペンを拾った。
少し震えた声で、彼が口を開けた。
「…俺も…好きやってんで。ずっと、好きやってんで?」
彼の笑顔がこれは現実なんだと言ってくれているような気がした。
夢じゃなかったと。