あの夏の君へ





「嘘やろ…?」

荻は持っていたシャーペンを床に落とした。

数分後、一気に顔が赤くなった。

前まではその顔を見るんが嫌やった。

照れた顔も、全部が…。

だけど今はそれも、全てが好きやと思える。

「好きやねん、荻…。付き合ってください…」

荻の気持ちは分かってる。

好きって分かってるから、告白したんやない。

私が好きって気持ちに気付いたから。

「嘘やろ…」

「本間やで」

彼は立ち上がり、床に落ちたシャーペンを拾った。

少し震えた声で、彼が口を開けた。

「…俺も…好きやってんで。ずっと、好きやってんで?」

彼の笑顔がこれは現実なんだと言ってくれているような気がした。

夢じゃなかったと。





< 96 / 278 >

この作品をシェア

pagetop