あの夏の君へ
さっきまで目を輝かせていた彼は一瞬黙り込んだ。
心を決めた様な顔をした荻は低い声で続きを話してくれた。
「…やから…お前より野球を選ぶかもしれん」
「…」
「集中出来んかったら、お前と別れる事を頭に入れといてほしい」
訪れてほしくはない現実。
それでも彼の頑張っている姿を見られるのなら、私は野球に負けても構わないと思ってん。
「荻のためなら我慢する」
例え…別れが来たとして、その後ヨリを戻すことができなくても。
彼の夢に私がいるのなら何も怖くなくなった。