コスプレ少年×少女(仮)
「彩・・・華?」
凛の後ろから包むように抱きしめているあたしの腕を、軽くつかみながら小さくつぶやいた。
「凛は凛だよ。少なくとも、あたしの前での凛は演技に見えなかった。遊園地の時だって、作り笑いじゃなくて本当の笑顔だった。あたしには分かったよ。」
黙ったままの凛に、あたしは続けた。
「あたしも最近ね、自分が分からないの。でも凛と会って、振り回されてばっかだけど、そのおかげで凛の前では素でいられた。でもそれだけじゃなくて、あたしが凛といて楽しいと感じたのは、凛も楽しいと感じてくれてる。素で接してくれてる。心からあたしに笑いかけてくれてたから、きっとあたしも心から笑えたんだと思う。」
まだ凛は口を開かない。
「凛は?あたしといる時、楽しいって演じてた?それとも心から楽しんでくれた?」
そこまで言うと、あたしの腕を握る手の力が少し強くなった。
「彩華、俺・・・[バァンっ]」
勢いよく開いた戸から現れたのは、凛のお兄さんだった。