雨のち晴れ。
そして、ついた北海道。
夏だからなのか、心地よい気温だった。
「梅崎さん」
そう駆け寄ってきた人は、
昨日の電話の相手。
井之上さんだ。
思った以上に若い人だった。
顔立ちもそんなに悪くない。
「井之上さん...で合ってますよね?」
何故か、質問してしまった。
もしかしたら、こういう事には
敏感になったのかもしれない。
「はい、その通りですよ」
「...よかった」
聞こえるか、聞こえないか
分からないくらいの声で、呟いた。
「では、いきましょうか」
「はい...」
井之上さんが運転する車は、
予想通りのパトカー。
「どうぞ」
そう言って開けてくれた、
後部座席側のドア。
「ありがとうございます」
一言、お礼を言って乗り込んだ。

...ちょっと目立ってるよね。
周りの目が気になる。
ひそひそと、話している人もいた。
「ごめんね、パトカーで」
「いえ、気にしてませんから」
気にしてないって言ったら嘘になる。
こんな形で、パトカーに乗るなんて
思っても無かったし。
「梅崎さんは、今何歳なの?」
他愛のない話で、緊張を解こうと
してくれているのだろう。
「今年で、17です」
「おぉ、若いねぇ」
井之上さんも十分、若いと思いますけど。
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