雨のち晴れ。
「井之上さんは、何歳なんですか?」
...気になる。
若いねぇなんて言ってたけど、
実は井之上さんも20代なんだろうなぁ。
「え、俺?」
少し驚いた顔で聞き返した。
私から、質問されるなんて
考えてもなかったのだろう。
「俺です」
可愛げのない返事だ。
自分でも少し反省する。
「俺は23だよ、ハハハ」
「23!?」
私と6年しか変わらないの?
凄く井之上さんは、大人びて見える。
「どうしたの?そんなに驚いて...」
井之上さんは意地悪そうに笑みを浮かべる。
「いや...私と6年しか
 変わらないんだなぁって」
「そうだねぇ、考えたらそれだけかぁ。
 1年なんてあっという間に終わるし」
井之上さんは、頷きながら続ける。
「俺も、梅崎さんと同じ歳の時に
 親を亡くしてるよ」
「え......」
驚いた。
まさか、同じ生い立ちの人がいるなんて
思っても無かったから。

「どうしたの?固まっちゃって」
「いえ...何でもありません」
そんなの...軽々しく口に出来ないよ。
判断するのは、間違えたくない。
もしかしたら、傷つけてしまうかもしれない。
私は、悶々と考えていた。
「梅崎さん?」
井之上さんは、心配そうに私の顔を覗きこんだ。
「あ...すいません」
「いいんだけどね、大丈夫?」
「はい」
井之上さんは、顔に感情が出やすいタイプの人
なんだと思う。
今は、さっきの心配している表情ではなくて
ホッと安心しているように見える。

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