雨のち晴れ。


お葬式。
わたしは、礼服を身に纏い
黒い額縁に入った家族の遺影を
胸の前で持っている。
目の前には、私を除く
4人の笑った顔があった。
お父さんは、少し引き攣っている。
お母さんは、目尻を垂らして可愛い。
お兄ちゃんは、改めて男前な顔だなって。
一番幼い冬花は、無邪気な笑顔で。
「お若いのにね...」
「伊吹ちゃんは、大丈夫なのかしら?」
ボソリ、ボソリと聞こえてくる言葉。
その一言一言が、心に傷をつけていく。
若いのに?
そんなの分かってるよ。
若いからなんなの?

大丈夫かしら?
家族を一気に亡くしてるのに、
大丈夫なわけないじゃない。
きっと、この辛さは貴方達には
一生わからないよ。

言いたかった。
でも、言えなかった。
改まった場所だったから
言う事ができなかった。

悔しかった。
貴方達が羨ましいよ。
家族がいて、生きている人の
温もりを隣で感じる事ができる。
私には、もう家族がいない。
私には、もう生きている人の
温もりを隣に感じる事ができない。

式は着々と進んでいた。
家族は、火葬場へ運ばれていった。
最後の面会と言われた。
私は、4人の顔を目に焼き付けた。
みんな幸せそうに微笑んでいた。

「...逝ってらっしゃい」
誰にも聞こえないような小さな声で
私は、この場で初めて涙を流した。
もう、会えない。
もう、会う事ができない。
家族は、火に包まれ星になった__
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