雨のち晴れ。

打ち明けた心

「...そして現在に至るの。
 傘なんか忘れて、ただ立ち尽くしていた。
 そこで、貴方と出会ったって訳」
「...」
長い説明を終えた。
順番なんて考えなかった。
ただ、あった事を話しただけ。
ちゃんと理解してくれたかなんて分からない。
でも、ずっと話せないでいた事を
人に打ち明けることで、
少しだけ心が軽くなった。
貴方は何を思った?

私は、顔を上げあの人の顔を見た。
「えっ...」
驚いた。
目を手で隠し、少しだけ震えていたから。
指の間から見えたのは、あの人の涙。
きっと、同情なんでしょ?
そんな涙なら欲しくない。
「今、いくつ?」
涙を服の袖で拭き、尋ねてくる。
「18です」
誕生日は、とっくの前に終わっている。
「18でそんな、大きな傷があるなんてな...」
ほら、やっぱりバカにしてるんでしょ?
同情してるんでしょ?
...そう思ってた。
それなのにあの人は...
「俺にも、その傷分けてくれへんか?
 1人で抱え込むなや。な?」
...嬉しかった。
確かにこの人なら
頼れるって直感的に思った。
大丈夫、大丈夫...
自分に言い聞かせた。
「あ!!」
いきなり大きな声を出された。
「なんですか!?」
「俺の名前な、大澤 一樹や。
 よろしゅうな」
にこっと爽やかな笑顔を私に向け、
手を出している。
...握手だろうか。
「私は...梅崎伊吹です。
 よろしくお願いします」
私は、その手を握った。



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