雨のち晴れ。
「えっ...ちょい...
 何で泣いとんのや?」
あたふたし始めた大澤さん。
「ふふ...
 大丈夫です」
ふっと笑みを溢した。
慌てている大澤さんが面白くて。
「やっと笑ったな」
「え...?」
大澤さんが言った事を、
理解する事ができなかった。
やっと笑った...?
「ずっと、辛そうな顔してたんやで?
 笑ろた顔見れてよかったわ」
暗くてよく見えなかったけど、
大澤さんの口からは八重歯が覗いていた。




「ここなんで...
 ありがとうございました」
深々と頭を下げる。
「また、家来いな」
「はい」
「じゃあな、おやすみ」
「おやすみなさい」
門の前から立ち去ろうとした大澤さん。
「あっ」
何かを思い出したように、戻ってきた。
「どうかしたんですか?」
「携帯かしてみ?」
「え...あっ...はい」
大澤さんの手に携帯をおいた。
すると、自分の携帯と私の携帯を弄り始めた。
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