IF
「お前って見た目に似合わず荒っぽい片付け方をするよなぁ。これは全部まとめて積み上げといていいのか?」
「ああ、頼む。」
文句を返してこない彼に視線を向けると、沈みかけた夕日が彼の頬を染めていた。
窓のカーテンが無情に揺れている。
私は友人が離れていく実感を覚え、思わず問いかけた。
「本当に、離れていくのか・・・?」
ラファエルは不思議そうに私を見つめ、微笑みながら言った。
「この近くに引っ越すだけだ。・・・心配しなくてもちゃんとやれるさ。」
そういうことじゃない・・・。
ラファエル、今のお前は逃げてるだけなんだよ。
現状から・・・。
本当の両親じゃなくても、仮にも親代わりだった二人から、逃げようとしているんじゃないか?
彼らと向き合って自分を貫くことを話すということは、自分自身とも向き合うということなんだ。
自分自身にけじめをつけて、覚悟を覚えるということだと思うんだ。
だけどそれができないのは何故だ・・・?
どうして逃げようとする・・・。
向き合ってくれよ、ちゃんと。
お前にそんな悲しい瞳を残したまま、育ってきた家を離れて欲しくないんだよ。
自分に正直に生きていくことを決めても、置き去りにしちゃいけないものは自分の中に存在するんだ。
それに気づいてくれ。
「・・・・。」
私は言えなかった。
どうしても、言わなければいけないことだったのかもしれないが、私には言えなかった。