IF
ラファエルは少し笑って優雅な曲を奏で始めた。


「俺もお前も、親不孝者だ。
結局離れた場所で好きに生きようとしてるんだからな。
けどそれでも、自分を貫きたいと思って生きていくなら、もう振り向くことはできないと思うんだ。」


彼の言葉は私へ静かに染み渡ってゆく・・・。


一人で決めた道を信じて歩んでいくということは、とても不安で困難だろう。

だけど大切なものを捨ててまで自分の道をゆくと決めるなら、一歩踏み出した瞬間から

自分一人で生きなきゃいけないと思うべきだ。

後悔なんて、してはいけない。

そう思う・・・。


「俺は、はじめから一人だったかもしれない、と思うと楽だ。」


「それは違う。」


私は思わずそう言っていた。

彼はピアノの音を止めて、私を振り返った。


「人間孤独のように思えて・・・そうじゃないから・・・。
だけど、お前はそれでいいと思う。
お前が信じる道なら、俺は応援できる。」



少し驚いた表情を見せて、そうか、と彼は答えて微笑んだ。



私は思った・・・。

彼が感じてきた、疎外感や孤独感・・・すべてのものを理解することは決してできないだろう、と。

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