IF
第二章 「夢のアリカ」

I couldn`t say good bye

オレンジ色の証明のバスルーム。湯気が金色の美しい髪を隠す。

シャワーの音と鼻歌が聞こえる。
彼はジッポライターでタバコに火をつけた。
快晴の早朝。大きな窓からは都会、ロンドンの町並みが見える。

整った大きなダブルベッドは高級ホテルの象徴。
部屋のドアが開くとともに、ワイシャツとチェックのミニスカート姿の少女が現れた。
少女と言ってももう二十歳になる女性だ。
彼女はタバコをふかす青年の隣の大きな窓のカーテンが開いていることに気づいた。
彼女はつかつかと歩み寄り

「何で、カーテン開けてるんですか。」

そう言いながら紺色の重いカーテンを閉めた。
青年は少し笑い、背中を向けたままの彼女に言いながら腰を上げた。

「20階なんて誰も見ないよ。」

彼女はカーテンをつまんだまま何かを考えていた。

「あ、俺もう行かないと・・。」

彼は腕時計を見て、スーツの襟に挟まった後ろ髪を出した。
背が高く、美しい茶髪と茶色の目、整った面立ちに長い足にはスーツがよく似合っていた。
彼は透明なガラスのテーブルの上にある灰皿にタバコを消し入れながら言った。

「君、今日でいくつになったんだっけ」

「え・・・?」

彼の以外な言葉に彼女は意表をつかれた。

「今日誕生日でしょ。」

彼は自分のかばんから大きめの財布を取り出した。
彼女は彼の表情を伺いながら答えた。

「・・・二十歳・・です。」

青年は彼女に歩み寄り、笑顔で取り出したものを差し出した。

「じゃあ、はい。」

薄暗い部屋の中、カーテンの隙間から入るわずかな朝日に、彼女の美しい金髪に逆光を浴びせる。
彼女は不思議そうに、おずおずとそれを受け取った。
< 15 / 109 >

この作品をシェア

pagetop