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「アリスさん!!お待たせしてすみません!」

アリスは青年と一通りの話しをした。

「え・・・!?」

彼は驚いたように口が開いたまま呆然としている。
アリスは一仕事終えた様子でジュースをすすっている。

「モデルお辞めになる話、本当だったんですか!!?」

青年は声を荒げ、丸いテーブルに身を乗り出して彼女に問いただした。

「そうよ?」

彼女はなんでもないように返す。

「だって・・・じゃあうちの雑誌は、「PEACH」はどうなるんですか!!?」

彼はロンドンでは人気の女性ファッション雑誌のモデルスタッフだ。
アリスは表向きには本業として雑誌モデルをしていた。

彼の焦った口調にアリスは淡々と返した。

「何がよ、ステファンとかジェニファーとか私より人気あるじゃん。何を困ることが」

「そうじゃなくて!!」

「何?」

「アリスさんみたいに純の金髪に、天然の銀眼の女性なんていないんですよ!」

アリスの両親は二人ともロンドン出身で、生粋のイギリス人。
それであっても、生まれてから大人になるまで金髪のまま育つ人はあまりいない。
たいてい茶髪か赤毛のように色が変わってゆくものだ。
両親のどちらかが黒髪を持っていたとしたら、黒の色はより強く子供に遺伝され、大人になる頃には髪はほぼ真っ黒になるケースが多い。
アリスの場合は両親とも美しい金髪をしていた。
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