IF
私も、そんな彼の天才的な世界を見てみたい。
そう・・・
「あ、あの・・!」
足を止め、黒髪が混じった金髪の後姿に声をかけた。
何も言わずに静かに振り向いく彼の美しい顔に、また思わず緊張が走った。
今では日本語に慣れてしまっているアリスは思わずぺらぺらと早口で話し始めた。
「えっと、あの!さっき女性不信みたいなこと言っておられましたけど、その、私はシュラさんのマネージャーとしてきちんと仕事をさせていただきたいと思っているので、その・・・認めてくださいますまで精一杯頑張ろうと思っています、だから、その・・・」
おろおろと話す彼女を不思議そうに見つめたシュラは、困ったように英語で彼女に言った。
「悪い・・・。俺まだあんまり日本語はなれてなくて・・・」
「え!あ、すみません。じゃあ英語で」
「ああ・・・」
お母さんの母国語なのに・・・。でも日本語は難しいからそう簡単に話せるようになるものじゃないよね。
私は昔から習っていたけど。
「あの、私、シュラさんの大ファンでもありますけど、一生懸命頑張りますので、あの、どうかよろしくお願いします!」
そう言って一礼した
シュラは少し安心したような、社長室で聞いた声とは違う穏やかに返した。
「まぁ、あの社長には色々世話になっているし、信用している。それに、何度か話は聞いていたし・・・。」
「あ、ありがとうございます!」
「まぁ、よろしく・・・」
そう言って彼はポケットからタバコを取り出し一本くわえた。
美白美麗?才色兼備?眉目秀麗?美辞麗句?
天才で綺麗なだけじゃない・・・。
シュラはタバコに火をつけ、またゆっくり歩き始めた。
どんな言葉も当てはまらない。
彼が感じさせるこの独特な雰囲気は何なのだろう。
彼の印象として似合う言葉を探しているうちに、昨日初めて会ったときの彼の顔と、今日見た顔を思い出していた。
そういえば・・・
私でもシュラのことで知らないことがあった。
それに
一人静かに歩んでゆくシュラに慌てて声をかけようとした。