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第四章 「揺れる」

二人で見る空

私が日本に来て一ヶ月が過ぎました。
仕事もなんとかできるようになってきて、シュラとの関わりもまともにでき始めていました。

事務所までの距離は二人とも電車移動だった。
アリスは日本にきて落ち着いてから免許を取ろうと思っていたのでまだ車がないし、シュラはまだ17歳で免許を取れる年ではない。
アリスは駅近くで借家を見つけた。シュラは以前まではマネージャーの車で事務所まできていたが、アリスがマネージャーになってからは電車通勤になる。
必然的に二人は毎朝同じ電車に乗っていた。

電車に乗っている時、たいてい人は暇で、そんな狭い乗り物の中、外国人顔なのに日本語で話す二人は目立つ。
つい最近まで日本語が不慣れだったシュラも、勉強能力は高いのでだいぶ自然に話せるようになっていた。

シュラは話してみれば意外と気さくな人で、学ぶことには熱心。
やはり母親が日本人だということもあるのか、あっという間に日本語をマスターしていった。

都内の事務所の最寄り駅に向かう電車の中、二人はつり革に手をかけながら日本語の勉強をしていた。

忙しい彼は少しの時間も無駄にしたくないと、私がまとめた日本語勉強ノートを一生懸命読んでくれていた。

シュラは、基本的にはクールだけど話すことは普通の10代の男の子だと思う。
でもとても大人な人でもあり、私が分からない仕事のことも色々教えてくれた。
すばらしい血統を持つ天才美青年という自覚がなく、あまり笑わないけど仕事にはまじめで、しっかりした人格の持ち主だという印象を受けた。

二人は時折談笑しながらいろんなことを話し合った。
社長の話を聞いて以来、女性不信ならば自分にはあまり話しをしてくれないかもしれないと思っていたが、思いのほか普通に接してくれて、ほかのスタッフと変わりないよう話してくれた。
社長に人付き合いが苦手だと漏らしていたこともあったらしいが、そうでもなさそうだとアリスは思っていた。

きっと今まで一人でいた時間が多かったのかもしれない。
人付き合いが苦手なんじゃなくて、不器用なだけなんだ。
元はとても思いやりがあって社交的な面があると思っていた。
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