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曇り空

私が日本に来て一ヶ月が過ぎました。
仕事もなんとかできるようになってきて、シュラとの関わりもまともにでき始めていました。

事務所前、少し先を歩いていたシュラはあの小さな階段を上がるとき、少し彼女を振り返った。
すると彼女は視線に気づいて、少し赤面して気をつけながら上って見せた。
彼は恥ずかしそうにする彼女がかわいらしく思えた。

彼女はいつもと少し違う微笑みを漏らした彼に気づかなかった。

「おはようございます。」

アリスの日本語は幼い頃から勉強していたおかげでなまりがない。
加えて澄んだ声は日本人には新鮮な印象を受ける。
その元気な挨拶でスタッフたちは笑顔を返した。

「おはようございます、アリスさんシュラさん」

「シュラさん今日はちゃんと起きれたんすねぇ」

「おはよう」

アリスは笑顔でその声に応えると、かばんを置いて仕事を始めようとした。
するとスタッフの一人がシュラに大声で声をかけた。

「そうだ！シュラさん！あのポスターできたんすよ！」

「は？・・・あれ送ってきたのかよ。」

「向こうが自信作だって大好評らしくて！」

「オファーが次々きてるんですよ、どうします？」

「ほかのファッション誌からのほうも噂を聞いたのか連絡が何本かきてるんですよ。」

「これですよ～」

そう言って一人がカレンダーほどのポスターを掲げた。

「じゃ～～ん！」

そこにはブルーとグリーンの瞳と金髪が映える美青年が写っていた。
とたんに女性スタッフがポスターを奪い黄色い声をあげた。
アリスはその人ごみの後ろで唖然としていた。

「（何のポスターなんだろ）」

シュラは彼女の横を複雑そうな表情で横切った。

「美容院に飾るポスターなんですよ、あれ」

一人のスタッフがアリスに笑顔で言った。

「え、美容院・・・ですか」

「はい。実はこの間街中でシュラさんスカウトされたらしくて」

「スカウト・・」