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「悪かった、つまらないことに時間を取らせて。あんたの言うとおり、話したいことはもうちょっと違ってたんだけど・・・。だけど今はいい、たぶんうまく説明できないから。」
「そうか。」
社長はそう言って優しい笑みを浮かべた。
ドアノブに手をかけて、思い出したように振り返った。
「社長、あんた・・・彼女と知り合いだったのか?」
「少しね」
シュラは社長の顔色を伺いながら聞いた。
「何か・・・彼女に負い目でも・・・?」
「・・・いや?」
「そうか、ならいい。ありがとう。」
「変なことを聞くなぁ」
背中越しの彼の声は、少し笑っているようだった。
だけど、俺にはわかるぞ。あんたは嘘が下手だ。
負い目じゃないだろうが、自分自身が関わる何かがあったんだろう。
あまり触れられたくないような、何かが。
だがあえて聞かないでおこう。
「・・・じゃあ、また。今度は話したいこと頭でまとめてくるよ。」
微笑みを見せてドアを閉めた。
あんたには本当に感謝しているからな。
あんたの何かをえぐるようなことはしないよ。
「ああ、またな」
彼は少しブラインドを引いて、眩しい夕日を見つめた。
「親の心子知らず、というやつか・・・」
そうしていつものように微笑んでいた。
明日の夕方からは、雨が降る。
そんな予報を朝のニュースで聞いたのを思い出していた。
「じゃあ明日になんてならなくていいのに・・・」
事務所の前で空を見上げてつぶやいた。
今日の今は、空が全体的にオレンジ色に染まるほど綺麗な夕日を見せているのに、これから雲は流れに流れて、明日のこの時間には雨を降らすという。
天候の移り変わりの速さ、日本に来てからそればかりを強く感じる。
だったら時間が止まればいい、なんてそんな子供みたいな理屈を心で吐き捨てていた。
それほど雨が苦手だということだけなのに・・・。