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一日の終わりは早いもので
今日もいつものようにてきぱきと仕事をこなし、雨なので社員食堂でみっちゃんたちと昼食をとり、午後はファイルと書類整理で目を回しながらなんとか片付け、午後7時・・・
社員スタッフはたいていこの時間で帰宅する。
全体で大きな企画の仕事を抱えていると、0時を回るまで仕事を続けることもあるらしいが、今は個人分担の仕事が多かった。
シュラの仕事に関して言うと、CMで使用される曲作りや、演劇や映画のサウンドトラックの作曲、所属ミュージシャンの作曲など、幅広い面での曲作りに追われていた。
とても重要で大きな仕事も多く、関係者との打ち合わせや共同で作曲するときの話し合いもあったり、ミュージシャンのレコーディングの場に赴くことも多い。
そのほかでは、編曲の仕事も数多くある。
マネージャーの私がシュラのスケジュールを管理しているのだけど、仕事をこなしているシュラより私のほうが目を回していた。
厳密に言うと、マネージャーといってもシュラの仕事を手伝えることは少なく、本人も昔からスタッフに協力を求めていないようだった。
私は本当にシュラが仕事をこなしやすいようにスケジュールを管理しているだけ。
でもそれがマネージャーというものだと思うけど。
そして、午後8時。
自分の分の仕事もやっと終えて、片付けにかかっていた。
すでに私以外の社員は事務所を出ようとしている者ばかりだった。
そして最後に残ったみっちゃんと麗奈さんが、部屋を出る前に私に声をかけた。
「じゃあアリスさん、お疲れ様です。お先に失礼しますね。」
「アリス、悪いけど男共が飲みっぱなしのコーヒーマグカップとかも、ついでに片しといてくれる?」
「あ、はい、わかりました。お二人ともお疲れ様でした。」
「ええ、おつかれ」
「お疲れ様で~す。」
二人はそう言って雑談しながらドアを閉めた。
もう事務所には誰も残っていないようで、二人の廊下での話し声が静かに遠ざかりながら聞こえていた。