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白い病室
目を覚ますと朝だった。
いったい何時間寝ていたんだろう、と寝ぼけながら考えて、薄暗いリビングに行くと、テーブルの上におかゆとメモが置かれていた。
置手紙には、社長不在の会社はしばらくやむを得なく休みになるということと、自分は見舞いに行けないが私には行ってほしいとのこと・・・。
そして、ろくな看病は出来なかったけど作ったおかゆは食べてほしいと。
意外にも丁寧な日本語で書かれていた。
「・・・お見舞い・・・行かなきゃ。」
アリスは思い出したように慌てて着替えを済ませた。
そしてラップがかかったおかゆを温めて、ゆっくり口に運んでいった。
シュラがいつの間にか頭に乗せていてくれた冷たいタオルのおかげか、熱は下がり、たくさん睡眠をとったのですっかりだるさも消えていた。
そして何より、とても美味しいシュラの手料理を食べてすっかり元気を取り戻した。
やはり彼は何でもこなせるユーティリティープレイヤーのようだ。
病人の看病もできれば、料理も出来る。
そういえば、初めて会ったときの私の怪我を手馴れた手つきで応急処置も施してくれた。
音楽一筋の人物のように思っていたので、あまりの意外さに疑問を感じながらも、アリスは部屋を片付け家を出た。
アリスはタクシーの中で携帯電話を見つめながら思い悩んでいた。
どうしてシュラはお見舞いに行けないんだろう・・・。
私のお見舞いには来てくれたのに。
社長のことを真っ先に知らされたのはきっとシュラのはず。
どうして社長のところより先に私の看病になんて来たんだろう。
看病のお礼も言いたいけど何より、社長のことを気にかけることのほうが彼にとっては一番大事なことのはずなのに・・・。