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そして彼に言った。


「だけど父も、シュラも、幼い頃から家族がいなかった・・・。それが大きな共通点でもありますよね。」


彼はうなずいて続けた。


「そう・・・決定的なものが二人とも最初から欠けていたんだ。まぁ、しょうがないと言えばしょうがないのだけど・・・。」




ある日

いつもの大学からの帰り、家に帰宅すると大きな音が聞こえた。


それは何かが割れるような音だった。


私は驚いて物音のするほうの部屋へと向かった。


すると奥のリビングのドアが開いている。その傍で使用人たちが数人青ざめた表情で立ち尽くしていた。


悟が事情を尋ねようと使用人に近づいた時、誰ともわからぬ怒鳴り声が屋敷中に響いた。


「いい加減にしろ!!」


その光景を見て悟は驚愕した。


クラウド家の主人であるラファエルの父が、彼に怒鳴りつけていた。

肩で息をしながら怒りをあらわにしている表情は、今まで見たこともなかった。

その隣では主人の腕を引いて止めながらも、おろおろしている奥様。


ラファエルは殴られたのか、白い美しい片方の頬が赤くなっていた。

しりもちをついた彼の傍には花瓶が割れている。ぶつかって倒れたのだろうか。


私は使用人たちと同じく立ち尽くしていた。

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