IF
「・・・そうだよな・・・。
本当の息子じゃない人間にだまされた気がしたんだろうな・・・。
そりゃあ殴られるか。」
そう言って彼は苦笑した。
悟は寂しそうにうつむく彼に言った。
「どうするんだ?これから・・・」
それまで数日、あえて触れないように過ごしてきたが、そうもいかない。
ラファエルは虚ろな瞳を空へと向けて、きっぱりと答えた。
「家を出る。」
え・・・。
私は声にならない疑問の想いを彼に視線として向けた。
「とりあえずは、あそこから離れたい。
卑怯だが言いたいことは全部置手紙にでも記しておく。
・・・あの人たちがすべて悪いわけじゃないからな。
俺が離れるしかないと思って。」
聞けばもう借家を見つけているらしい。
悟は混乱して、聞きたいことをすべて口に出した。
「大学はどうするんだ?」
「続けるよ。」
「働く当てあるのか?」
「もう少し音楽活動を続けるしかなくなったな。不本意だが色んな仕事を探してみようと思う。」
「炊事と家事は・・・」
「こう見えても一通りのことは出来る。」
「会社興すって言ってたじゃないか、あれは?」
「ああ、将来の話だろ?大学でそんなこと勉強できなくても俺は独学できたからな。できると思ってるよ。」
「俺はてっきり・・・親父さんと同じような会社を作るんだとばかり・・・。」
はっ・・・!
しまった、禁句・・・。
「・・・」