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彼女は満面の笑みで答えた。
嬉しそうに、今自分が心で覚えた気持ちと同じくらいの笑みで。
その一瞬のうちにすべてが推測できた。
忘れていた・・・そういえばコンサート近所でやるって言ってたよな。
彼女は一人で行く勇気がないからラファエルと仲がいい俺を誘ったんだ。
ま・・・協力すると言っておきながら相談を受けるだけだったからな・・・。
自分が架け橋になってあげてもいいかな・・・。
「私はそんな風に思った。」
アリスは不思議そうに社長に聞き返した。
「自分のことはよかったんですか?母に何もアタックしなかったんですか?」
「ん・・・まぁね。」
そうおじ様は照れ笑いした。
「私はね、彼女の笑顔が好きだった。
彼女に悲しい顔なんてしてほしくなかった。
彼女を喜ばせてあげたかった。彼女が幸せならそれでいいと思ったし、彼女が幸せだと思うことを自分が一つでも増やせてあげられればと思ったんだ。」
幼い少年のように、童心に帰ったように彼は笑って答えた。
「何故・・・?」
「何でかな・・・。
彼女を幸せにしてあげたいとは思ったけど、自分のものにしたいとか・・・自分の傍にいてほしいとか・・・そんな風には思えなかった。
そりゃあ私も男だから強引にでも彼女の気持ちを奪いたいとは思ったよ。
だけどね、私は自分より彼女を中心とした幸せを考えたかったんだ。」
そう言っていつもの優しい笑みを漏らす。
「・・・・。」
アリスは社長の正当な理由に言葉が出なかった。
無償の愛とでも言うのだろうか。
彼の考え方はとても大人な意見だった。
「おじ様は・・・その頃から素敵な人だったんですね・・・。」
「え?そんなことはないよ。バカな男だよ。」
アリスはただ首を横に振った。