紅梅サドン
真澄の体の隅々まで僕は知っているというのに、決して一緒に風呂には入りたがらない。

『秋、ねえ秋』と必ず二回名前を呼ぶーーー真澄。

別れて一年経っても、真澄と二年暮らした記憶が邪魔する。

『真澄の記憶』が『真澄の記憶を忘れる邪魔』をする。


その時、玄関が大きく開く音がした。

「秋さん、ルノーさん、今日は冷やし中華ですよ。」

雪子と次郎の姿が見える。

雪子の声に僕は慌てて、真澄宛てのハガキを机の一番奥に入れた。




それから一週間後、矢萩との飲み会は予定通り開催される事になった。



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