紅梅サドン
「さ、行きましょ、遅れちゃうから。

大丈夫よ。上手く雪子さんの友達の振りするから。

ルノーと一緒でね、『嘘』付くのは得意なの。」

恭子さんはそう笑って立ち上がった。


金曜日の新宿は人で溢れている。

恭子さんは蒸せかえる様な雑踏の中を、ヒールを高らかに鳴らして僕の隣を歩いている。

「今、ルノーは田辺さんとこに住んでんだってね?

いきなり『結婚しよう』だの私に言っておいて、ある日突然出てったから心配してたの。

あの『次郎』とかいう弟君も、一緒なんでしょう?。」



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