紅梅サドン
「ーー田辺、戻ったのか。ボクにお土産も無いのかよ?

普通、子供を置いて出掛けたら、アイスクリームくらい買ってきてもいいだろ?。」

今まで隣の布団で寝ていたのだろう。

目を擦りながら次郎が起き出し、テーブルに座った。

部屋を挟んで、雪子とルノーの寝息が輪唱の様に聞こえる。


「起こしたか?悪かったな。

それに、アイスクリームの一つも買ってこれない様な、気の使えない大人で悪かったな。」

僕はルノーの残したグラスのワインを手に取り飲み干した。



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