紅梅サドン
あの兄弟は辛い想いを抱えていたはず。

両親が自殺してからの日々は、何度となく、取り囲む大人達にその短い人生を翻弄されたのだろう。

それは息子達を残して自殺した、自身の『両親』も含めたーーー大人達なのだ。


ルノーは両親が自殺した時、14歳。

想像出来ない位に辛かっただろうが、少しづつ事実を受け止める事は、まだ出来たのだろう。

言い換えれば、幼すぎる『次郎』のために耐える力があったーーと言えるのかも知れない。


しかし次郎は違う。

二歳にして、意味も理解出来ないまま、一番身近な大人を失い、まだ不完全で純粋な心に深い傷を負った。

幼すぎる心が、本能的に大人を拒否してしまう様になるのは当然かも知れない。

次郎にとって『大人』という生き物は、どこまでも裏切り続け、自分を果てしなく傷つける『人間』ーーなのだ。


『人間がこの世から消えてしまえば良いーー』と云う、次郎の幼い傷ついた魂が僕を何度も揺さぶっていた。



< 207 / 311 >

この作品をシェア

pagetop