紅梅サドン
「だからーーーー、

僕は“可哀想”なんかじゃねえよ。

そうだよね、父さんーー。」

僕は次郎の言葉を飲み込んで、コクリと頷いた。

次郎は僕を父親だと友達に嘘を付いた。

本当は生きてるのだとーー。

瞬時に事情を飲み込んだ僕は、精一杯の笑顔を作り声を出した。


「次郎がいつも塾で御世話になってますねーー。

私、現在は事情がありまして、旧姓の名字『田辺』ですが、昔は妻の名字を名乗ってまして、次郎と同じ名字の『海島』だったんですよ。

みんな宜しくね。」

しかし僕の精一杯に反して、少年達は高らかに声を上げ笑い飛ばした。



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