紅梅サドン
『私は誰かの小さな味方になりたい。

愛する人にとって、小さな希望になれる様なーー』

さっき雪子が言った言葉が胸に突き刺さって、僕は頬を伝う涙を止める事が出来なかった。


僕は何をしてきたんだろうーー。

真澄と別れる日まで何の優しい言葉も、知らない国に飛び立つ真澄に、応援する言葉の一つも掛けないまま。

別れたくないと泣く事さえも出来ずに。


僕は最愛の人の小さな“味方”にさえ、なれなかったんだ。

そんな僕に残した最後の言葉。

『そういう所が好きなのーー』


こんな酷く惨めで情けない男に、そんな言葉を残してくれた真澄ーー。

最高に情けない僕の何が好きだというんだ?


真澄の言葉を何度も想い出しながら、僕は一人残された部屋で、いつまでも涙を止める事が出来なかった。



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