お嬢様も楽じゃない！！
あれからやっとのことで段ボールを運び、片付けも一段落したころ、部屋には夕日が差し込みお腹からは悲鳴の音が聞こえた。



｢そうだ……今日は何も食べてない｣



再び血糖値が足りないと身体から警告が発している。



しょうがない……何か作ろ。



エネルギー不足の身体を動かし、リビングに出ればソファーに寄り掛かっかりながら規則正しい吐息を漏らしている悠さんが視界に入る。

なんでこの人は寝ていても、こう、色気があるのだろうか。
目は閉じられていても半開きになった唇からは僅かに甘い吐息。

こっちは疲れてるっていうのに色気を振り撒き呑気に(悠さんのせいではないけど。)寝ている悠さんにちょっとした悪戯心が沸き起こり頬っぺたに指を這わせた。

くすぐったいのか眉を寄せ顔を逸らそうとする悠さんにあたしの悪戯心はさらに高まる。
ゆっくりと髪を指で掬い手から零れ落とす。



｢そうだ、ここをこうすれば――｣



サラサラと漆黒の柔らかい髪を編みこみピンで止めると長い睫毛が目立ち整った眉が現れ、思わず見惚れてしまいそうになるのを頭を左右に振り紛らせた。
似過ぎて琉紀様はこの人を元に作られたのではないかと思ってしまいながら、悠さんの頭を撫でた。



｢(あたしは何をやってるんだろ)｣



当分起きそうにないのを横目で見ながら台所に向かった。



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