アイ・ラブ・おデブ【完結】
車が静かに止まり、二人が降りた場所から、高い塔の上階に鳶色の鐘がぶら下がっているのが見える

…ここって…教会?
どんな撮影なの?

遥は更に不機嫌な表情で高い塔を見上げ、握っている小夜の手に力を込めた

正面の入り口からスーツを着た日本人が駆け寄ってきた

「すみませ~ん!笹原さんですね?準備はこちらで~す」

一瞬、手を繋いでいる二人を怪訝そうに見てから中へと案内した

黙ったまま遥は歩みを進め、入り口脇の廊下へとついていく

幾つか並んだ扉の一つを開け、先程の案内の男性は中の人に声をかけた

「新郎がお見えになりました~」

…えっ?新郎?
…てことは…環さんが花嫁さん?

本当の結婚式ではない…撮影のためだと自分に言い聞かせても心の奥がズキズキと痛む

今、握っている遥の手を離しては駄目…そう警報が頭の中で響いている

しかし、無情にも近くにいたスタッフに準備をすると言われ遥は鏡の前へと離れていった
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