アイ・ラブ・おデブ【完結】
「さあや…こっちに来て…」

小夜の名を呼ぶ声は甘く、いつもなら無条件に引き寄せられる魔力があるのだが、遥の傍へと近づく一歩が出ない

婚礼衣装を纏った遥がゆっくりと部屋の隅に立つ小夜に近づいてくる

あと一歩で体が触れる所までエナメルの白い靴が来た

「…ごめん…こんな撮影なら断るべきだった…
無理をしてでも…
でも…引き受けてしまった以上今さら断れない…
…僕の隣にいるべき人はただ一人…さあやだけだ…」

辛そうに話す遥に小夜は笑顔を作り答えた

「うん!…
ハ…ハルは王子様みたいだよ
とっても格好いいよ…
ほら!笑顔の花婿さんにならなくちゃ…」

薄くメイクをされた頬にそっと触れ、笑顔を引き出した

扉を叩くノックの音がして遥を連れていってしまった

…大丈夫…ただのお仕事だよ…
ハルもそう言ってたじゃないの…
彼の言葉を信じて…

胸の前で手を握りしめ、自分の元へと早く戻るよう願った
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