アイ・ラブ・おデブ【完結】
遥と環
鍋を磨く手を止めた

毎日、無心になりたくてタワシを動かす

そんなことを1ヶ月もしていれば、このキッチンの物は店に並べられている物と見紛う如く光っている

換気扇フードや排水パイプに至るまでを綺麗にしても、自分の気持ちは落ち着かない

ここにいるのは自分の意思だが、本望ではない
こうするしかなかったのだ

…一番大切なものを守るために

遠く離れた空の下を想う

…今頃はどうしているんだろうか?
涙で枕を濡らしてないだろうか?
ちゃんとご飯は食べているのだろうか…
もう…僕がランチも作ることは出来ない…
一緒に自転車で出掛けることも出来ない…
一緒に夕焼けを見ることも出来ない…
あぁ…愛しい人よ…
願いが一つ叶うなら君を抱き締めたい!
その温もりをこの手の中に閉じ込めていたい

洗剤で荒れた手を見つめ、叶わぬ思いに目を閉じた
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