アイ･ラブ･おデブ【完結】

言葉の不慣れな遥にも聞き取れるくらい、美しい発音のフランス語に思わず目を向けていた

環の言葉に驚いた男は顔を赤くして立ち去った
その後ろを女が慌てて追いかけ、騒動の人物はいなくなった

見るものがなくなった観客は、買い物に戻り普通のマルシェの賑わいに戻った

しかし、見ていたのは遥だけではなかった
騒動を見ている観客の中に、一際美しい男がいるのを環が見逃すはずはなかった

買い物を終えた遥が地下鉄の入り口に向かうと先程の女性…環がいた

道路に面したカフェから遥に手招きをした

女性と関わらないように生きてきた遥は、軽く会釈をして地下鉄へと歩き出した

ぼ～っと歩いていると改札の手前で後ろから腕を取られた
振り返ると明るい笑顔を向ける環がいた

「ねえ…ちょっと待って！
あなた…日本人でしょ？
少し、お話できない？
私…懐かしい日本の話がしたいの！」

いつの間にか腕を絡め、男を誘う女の目で遥を見上げていた